春陽堂 山頭火文庫 句集(2) より

草木塔(二)


「雑草風景」より

みんなではたらく刈田ひろびろ

なんぼう考へてもおんなじことの落葉ふみあるく

死んでしまへば雑草雨ふる


「柿の葉」より

てふてふひらひらいらかをこえた

澄太おもへば柿の葉のおちるおちる

やつぱり一人はさみしい枯草

自戒
一つあれば事足る鍋の米をとぐ


「銃後」より

天われを殺さずして詩を作らしむ
われ生きて詩を作らむ
われみづからのまことなる詩を

ふたたびは踏むまい土を踏みしめて征く

遺骨を迎へて
いさましくもかなしくも白い函

みんな出て征く山の青さのいよいよ青く


「孤寒」より

母の四十七回忌
うどん供へて、母よ、わたくしもいただきまする


「旅心」より

行旅病死者
霜しろくころりと死んでいる

どこでも死ねるからだで春風

うまれた家はあとかたもないほうたる


「鴉」より

春の山からころころ石ころ

啼いて鴉の、飛んで鴉の、おちつくとくろがない